研究室について

発達脳科学研究室

ナショナルジオグラフィック日本版公式サイトにて、研究室が紹介されました(2014年12月〜2015年1月)。
こちらからどうぞ。

第1回 赤ちゃんの脳の構造はほとんど完成している
第2回 急激に成長する赤ちゃんの脳で起きていること
第3回 つながりの変化が示す赤ちゃんの脳の発達のしくみ
第4回 赤ちゃんの脳の中を見てわかった「発達の法則」
第5回 赤ちゃんはどこまで「自ら育つ」のか
第6回 脳の発達の「グランドセオリー」を求めて

研究室の創設
「発達脳科学」は、2002年4月に教育学研究科・身体教育学コースに創設された教育研究分野です。研究室は、多賀が教育学研究科に着任した2000年10月より実質的な活動を開始しています。当初、以下のような研究の理念が掲げられました。

「こころ」と「からだ」が発達することの根本的な原理を科学的に追究する。脳・身体・環境の間の動的な相互作用を通じて、運動・知覚・認知などがいかにして獲得されるかを研究する。遺伝要因と環境要因の複雑な関係を分析し、発達と学習における適応性、創造性、個性の創発メカニズムの理解をめざす。

これまでの業績
当研究室では、乳児期初期の脳と行動の発達に焦点を当てた研究を行ってきました。世界に先駆けて、近赤外分光法を用いた脳機能イメージング手法を適用し、覚醒した乳児の脳の活動を可視化することに成功しました。そして、生後3ヶ月頃までに、乳児の知覚、認知、言語等に関わる脳の基本的な機能が発現していることを明らかにしてきました。近年は、脳の機能的ネットワーク機構の発達も捉えることができるようになりました。また、3 次元動作解析装置等を用いた行動計測を用いて、乳児期に観察される自発運動の特徴や環境との相互作用を通じた学習機構等を明らかにしてきました。この間、研究スタッフや大学院生らと協力し、多数の乳児と保護者のボランティアを研究室にお迎えして、研究を継続してきました。本研究室は、ヒトの乳児期初期の脳と行動の発達を包括的に捉えることを目指す研究室として、ユニークな研究成果を国内外に発信しています。

研究のターゲット
ヒトの脳の発達に焦点を当て、人間としての生存が成立する動的原理を追究しています。物理学、生物学、工学、心理学等を基盤とし、ヒトを直接の対象とする研究を行って、非自明な現象や新しい捉え方の発見を目指しています。具体的には、次のような研究課題に取り組んでいます。
(1)代謝・神経活動の発達と自発性の起源
(2)胎児・乳児における脳の形態形成とネットワーク形成
(3)発達過程において一時的に現れ消えていく形態や活動の役割
(4)自発運動と意図の発現
(5)睡眠の発達と意識の起源
(6)ヒト・動植物・微生物を含む生態系での共生を可能にする発達
 こうした問題に対して、ヒトの研究に適用可能な新しい計測技術を取り入れながら、生きている状態の光イメージング、生体信号計測、行動計測を行います。そして、時系列解析や形態解析等のデータ解析を行い、発達に関する普遍性・自己組織性・複雑さ・個性を取り出すことを試みます。さらに、脳の発達に関わる理論モデルを作り、シミュレーションを行い、現象を生み出す機構をより包括的に理解することを目指します。

研究室の方針
ヒトの発達という事象は、極めて複雑なものであり、その解明には決まった道筋があるわけではありません。したがって、研究者一人一人が最も興味ある事象に着目し、それを解決するための専門性を確立し、それを深めていくという方法をとります。そして、個別の事象の理解が深まれば、それは自ずと普遍的な性質の理解につながるものと考えられます。ただし、発達に関しては、部分と全体との関係性が常に問題になりますので、個別の事象や機能だけに着目するだけでは不十分なことが多く、システムとしての振る舞いについての理解が必要です。そのためには、既存の専門領域を再構築するような作業も必要になります。実際の研究においては、(1) 現象の発見 (2) 研究手法の開拓 (3) 理論の構築という3つの点のうち、少なくとも1つを実現する方向に向かっていることを意識します。

競争的資金獲得状況

  • 科学技術振興事業団さきがけ21 研究PRESTO(平成11〜14年)「ヒトの発達過程における身体性とモジュール性」、研究代表者
  • 科学技術振興事業団戦略的創造研究推進事業継続研究SORST(平成15年)「発達脳科学における機能的イメージング」、研究代表者
  • 科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業CREST(平成15-20年)「乳児における発達脳科学研究」、研究代表者
  • 科学研究費補助金(若手研究S)(平成20-24年)「知の起源に関する発達脳科学研究」、研究代表者
  • 科学研究費補助金(新学術領域研究)(平成24-28年)「胎児・新生児シミュレーションに基づく初期発達原理とその障害の解明」、分担研究者
  • 科学研究費補助金(基盤研究A)(平成26-29年)「乳児の睡眠と学習における脳の機能的ネットワークの発達」、研究代表者(注:同年度に基盤研究Sが採択されたため廃止)
  • 科学研究費補助金(基盤研究S)(平成26年-31年)「ヒト脳の形態形成から行動生成に至る発達のダイナミクス」、研究代表者
  • 科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)(平成27年-30年)「脳および頭蓋の形態発達と進化」、研究代表者
  • 科学研究費補助金(新学術領域研究(研究領域提案型))(平成30年-33年)乳幼児における個性の創発、分担研究者
  • 科学研究費補助金(基盤研究A)(令和元年-4年)脳の発達と腸内細菌、研究代表者

博士論文・修士論文・学士論文の題目

  • Development of articulatory coordination in speech production(音声生成の調音協調の発達)(博士論文、2014年3月、大橋 浩輝)
  • Changeability of infant spontaneous movements in a novel environment(新奇な環境における乳児の自発運動変化可能性)(修士論文、2014年3月、加藤 萌)
  • Frequency-specific functional network of the resting brain(安静時脳における周波数特異的な機能的ネットワーク)(博士論文、2013年9月、笹井 俊太朗)
  • Spontaneous activity and evoked response in the infant brain(乳児における脳の自発活動と刺激応答)(修士論文、2013年3月、今井 麻起子)
  • Spontaneous movements in infants: age-related change in movement characteristics and developmental outcome(乳児における自発運動:運動特性の月齢変化と発達予後)(修士論文、2012年3月、金丸 奈央)
  • 乳児における運動学習の記憶想起に、身体運動の拘束が与える効果(学士論文、2012年3月、加藤 萌)
  • Visual perception of apparent motion during walking(歩行時の仮現運動視)(博士論文、2011年3月、谷部 好子)
  • Functional connectivity in the brain during resting state as measured by NIRS and fMRI(NIRSおよびfMRIで計測された安静時における脳の機能的結合)(修士論文、2010年3月、笹井 俊太郎)
  • 乳児の自発運動および睡眠・覚醒リズムの発達について(学士論文、2010年3月、金丸 奈央)
  • Neural mechanisms of learning in young infants(乳児期初期の学習に関する神経メカニズムの解明)(博士論文、2009年3月、中野 珠実)
  • Prefrontal cortex activation of young infants during novelty detection: A near-infrared optical topography study(新奇性の検出に関わる乳児の前頭葉の賦活:光トポグラフィを用いた研究)(修士論文、2006年3月、中野 珠実)
  • 運動学習における練習の効果:行動実験・脳機能計測からのアプローチ(修士論文、2005年3月、池上 剛)